ネパールの空〜故佐野由美さんに捧ぐ〜  (H22.12.24)

ネパールの空
〜故佐野由美さんに捧ぐ〜
                     

前向きに
つんのめりながら
生きている
けっして
振り返らない

次の瞬間に
死んでもかまわない
生き方がしたい

十八歳の少年が
明るく言う
しようがないです
ここで生まれたからには

楽しいですかと
尋ねる方が間違っている

どうしてこの世は
不平等なのか

コピラの母が言う
私の人生は辛いものです
しかし未来を作っていこうと思う
私の子どもたちの
くわえた鉛筆に
筆に力が
口に力が
スケッチブックに
人が写される

人間が生きるのを
見てみたい
人が分かってこそ描ける
絵がある

やさしい人になる
何て
難しいことなんだろう

パタンの裸足の少女は
見つめている
その瞳で

もう一度
タライ平原を見たい
その向こうにある
空が見たい

※	佐野由美=一九七五‐一九九九。神戸市長田区生まれ。
一九九八、大阪芸術大学美術学科卒業。一九九八年四月より一年間、
NGOの長期先生派遣事業に参加し、ネパールにて小学校の美術指導
を行う。帰国直前に交通事故に巻き込まれ逝去。
〜小野の遠眼鏡〜